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【東北】果樹園の新たなブランドづくり、最初の一歩となるロゴマーク。

佐藤佑樹さんとの出会いは、3ヶ月前にさかのぼります。small design centerがオープンしてすぐに、東京での商品開発の打ち合わせがてら訪れてくださったのがきっかけでした。今回、会社のブランディングをするにあたってロゴマークを一緒につくるデザイナーを募集したいとご相談いただき、あらためてじっくりお話を伺いました。柔らかい空気をまといながら、間違いないと思ったことはズバッと言い切る。優しさと強さのギャップがとても魅力的なひとです。

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桃の収穫をする佐藤さん

佐藤さんは、福島県伊達市で桃や林檎、さくらんぼなどの果物を栽培し販売している「有限会社伊達水蜜園」の代表です。もともとはご両親がされていた果樹園の仕事を4年前に引き継ぎ、若い兄弟2人で会社を運営しています。社名にもある伊達地域は桃の産地として有名で、全国でもトップクラスの生産量を誇っています。

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「もしかしたら、農家をやってなかったかもしれないんですよ」と笑う佐藤さん。東日本大震災をきっかけにご両親が長野に移住され、残された果樹園を誰かが引き継がなくてはならない状況に。それまでまったく別の仕事に就いていた長男の佐藤さんは、家業を継ぐことに決めました。

「それまでは、東京でアニメーション制作の仕事をしていて。震災の少し前に地元には帰ってきてたけど、バイトをしながら手伝いをするくらいでした。そんなタイミングで震災が起こって、「自分がやるしかない」状況になったし、そういう気持ちが自然と生まれたんです。」

それまでは、継ぐつもりはまったくなかったんですか?
「そうですね(笑)。けれど、震災をきっかけに「なんとかしなくちゃいけない」「自分がやるしかない」という想いが自然と生まれたんです。うまく説明できないんですが、今回みたいに何かがあると、わかるものなのかもしれないですね。」
いま福島では、そういった想いを抱いてUターンしたり、地元を盛り上げていこうという若いひとたちがとても多くいるという。

その一方で、被災地である福島県の農業は深刻な問題を抱えている。
「うちは出荷ルートが特殊で、以前は6割以上が大手百貨店への卸売り、という形式をとっていたんですが、震災をうけてすべて契約を打ち切られてしまいました。いまは賠償金でなんとかやっているのが現状です。」

そういった経験をふまえて、佐藤さんの代では新たな顧客を開拓することにした。
「個人のお客さんを増やしていこうと考えています。販売先の5割が個人のお客さんという状況をつくります。」
「これからは、ひとりひとりが自分で選んだ信頼できるひとからものを買う時代。生活者が、農家から直接野菜や果物を買う時代が必ず来ます。個人客を増やすには、ブランド化が必要不可欠だと思って、まずは何ができるのかを考えた時に、その第一歩としてロゴマークをつくろうと考えました。」

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佐藤さんの果物の魅力と、その強い意思を伝えるロゴマーク。
今後はネット上でも広く発信していくために、ECサイトをつくる構想もあるそう。他にも商品のカタログやパッケージの制作など、佐藤さんの考えや想いをかたちにするデザインの可能性は今後もたくさんありそうです。
そして、ブランドをつくるにあたっては「誰に食べてほしいのか?」「どんなところが魅力なのか?」といった、ターゲット設定からコンセプトづくりまでを一緒に考えてつくるような、幅広い「デザイン」をしていくことになると思います。

もとはアニメーション制作の現場でクリエイターとかかわる仕事に就いていた佐藤さんですが、どんなひとと一緒にやりたいなどのイメージはあるのでしょうか。
「デザインはもちろん大事ですが、フィーリングってあると思うんですよね。一緒にやっていきたいと思ってくれたひととは、できるだけ会って話をしてみたいですね。」
お互いの立場で意見を話し合いながら長いあいだ付き合っていくパートナーだからこそ、人柄や共感性を大事にしたいと考えています。

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インタビューは、small design centerの公開イベントというかたちで行いました。

佐藤さんにお話を伺った「small design night-桃農家さんの会-」には、マルシェの運営・バイヤーをしている方、農家さんと仕事をしているデザイナーの方、地域にかかわる自主的な活動をされている方などが集まり、さまざまな視点の意見を聞くことができました。
そんななか話題にあがったのが、デザインのフィーについての問題。農業とデザインがタッグを組みあらたな価値が生まれる反面、お互いの仕事についてあまり詳しくない両者にとって、双方が納得できる金額の設定は、難しい問題のようです。

たとえば、「桃の木で支払い」はどうなの?という話になりました。デザインと、桃の木の交換という考え方です。収穫された桃(1本から2〜300個採れるそう)が、毎年送られてくる。ときには桃の木の様子を見に行ったり、仲間をあつめて収穫体験するのもいいかもしれません。そうすることによって、納品して終わりではない継続的な関係が生まれますし、東京ではできない体験を価値として捉えることも十分できます。
必ずしも今回の案件がそうなるということではないですが、お互いの関係のつくりかたまで一緒に考えていけたら、楽しいかもしれません。

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これまでの常識にとらわれない、柔軟な考え方であたらしい果樹園をつくろうとしている佐藤さんとともに進むことは、とても貴重な体験になると思います。佐藤さんに会ってみたい、話をしてみたいと思った方、まずは応募してみてください。

(2015.04.21)